今回は「実家じまい」についてお話しします。

ある資料によると、多世帯住宅は昭和55年をピークに減少しています。これは、核家族化が進み始めた時期と重なります。親世代が親の世話をしていた頃は、「葬式代だけ残しておけば大丈夫だろう」という考え方が主流でした。

しかし、現状はどうでしょうか?

コロナ禍の影響もあり、「お通夜」「告別式」といった従来型の葬儀は減少し、「家族葬」「直葬」が増加傾向にあります。これは、親族の高齢化や施設・病院への入居、認知症などの理由で参列が難しくなっていることに加え、一人っ子や未婚者の増加も影響していると考えられます。

葬儀費用は、工夫次第で費用を抑えたり、希望を取り入れたりすることができます。しかし、実家じまいはどうでしょうか?

持ち家で売却可能な地域であれば、費用の心配は少ないかもしれません。しかし、売却が難しい場合や、売却価格が低い場合はどうでしょうか?当然、借家の場合は更地にして返却する必要があります。解体費用、遺品整理費用、不動産手続き費用などが予想されます。賃貸住宅の場合も、遺品整理、クリーニング代に加え、家賃も発生するため、精神的な整理がつかないまま対応を迫られるのが現状です。

ここでは詳細を割愛しますが、実際にはさらに深刻なケースも多く見られます。

例えば、解体費用100万円、遺品整理50万円、不動産手続き費用50万円とすると、合計200万円は想定しておく必要があります。賃貸住宅の場合も、遺品整理50万円、クリーニング代10万円で、合計60万円はかかります。

実家整理の費用を抑えるために、ご自身で作業される方もいますが、一軒家の場合は年単位の期間を覚悟する必要があります。自宅から実家までの交通費、車がない場合は大型家具などの搬出のためのレンタカー代、自治体のゴミ処理費用などもかかります。もちろん、実家に住んでいる方や、近くに住んでいる方で持ち家であれば、ご自身での整理も可能かもしれません。その間にも、電気代、水道代、火災保険料などは発生します。私たちは、経験に基づいた確認項目を把握していますので、ご相談時にご提案と確認が可能です。

規模によって費用は変動しますが、「実家じまい」の費用を安易に考えると、いざという時に対応できなくなる可能性があります。

親御さんが施設や病院に入居された場合、早めに実家じまいを検討する必要があります。住居は、人が住まなくなるとすぐに劣化が進みます。親御さんの認知機能がしっかりしていれば、売却も比較的スムーズに進むでしょう。しかし、認知症の場合はどうでしょうか?現実には、費用負担がネックとなり、相続放棄を選択される方もいます。

男性の一人暮らしの片付けでは、「ハサミ」「爪切り」が数十個も見つかることがよくあります。女性の一人暮らしでは、使いきれないほどの「食器の数」「大皿」などが見つかります。

紙一枚、お皿一枚から捨てる。これも、ご自身でできる実家じまいです。残された家族や子供に負担をかけないためにも、今日からできることを始めてみませんか?その継続が、家の中をきれいにするだけでなく、気分転換にもつながります。気力や体力がなくなり、考えることや行動することを避けても、何も解決しません。